2010年03月12日
サブカル嫌い
人それぞれにNGワードがある。私にとってそれは「サブカル好きでしょ」という言葉だ。
私が編集した本などを知っている人は必ずこういうイメージを描くようだ。たしかに若い頃、サブカルというものにドップリはまっていた時期もある。
サブカルというものの定義は難しいが、私が学生だった1980年頃はテレビでも音楽でも本でもいろいろと新しいムーブメントが起こった時期だと思う。その新しい文化を表現するのにサブカルという言葉が用いられていた。
私がサブカルを意識しだしたのは深夜番組の「冗談画報」あたりからだろう。その番組で紹介される米米CLUB、聖飢魔II、パール兄弟、電気グルーブ、ウッチャンナンチャン、ダウンタウン、竹中直人、爆笑問題といった人々のパフォーマンスには大いに刺激を受け夢中になった。当時は深夜番組がとても面白く、とんねるずが主演し、素なのか演技なのかがないまぜになったような実験的なドラマ「トライアングル・ブルー」や、不思議なコントが繰り広げられる「ウソップランド」など、今や伝説となっているような新しいスタイルのテレビ番組がたくさん生まれた。
サブカル系の書籍としては、以前にも触れたホイチョイプロの『見栄講座』、まる金まるビを流行らせた渡辺和博の『金魂巻(キンコンカン)』、糸井重里の『萬流コピー塾』、この3冊のセンスには特に衝撃を受けて、これらに触れたことがきっかけで、私は編集者を志すようになったのだ。
私が編集者になってからは、なんきん、ナンシー関、押切伸一など出版界のサブカルの雄が集った『業界くん物語』が話題となる。これを作ったのが、私よりも数年先に編集者になっていた、いとうせいこう。彼は以前より、講談社の「Hot-Dog PRESS」に凄い奴がいる、と若手編集者の間では注目の存在だった。私の勤めていた会社が講談社の近くだったこともあり、時々いとうせいこうの姿を見かけることがあったが、眩しくも妬ましい存在だった。
しかし今考えてみると、あるカルチャーに対抗してこれらのサブカルチャーを楽しんだわけではなく、たんにそれが面白かったから追いかけただけ。 人が知らない通好みを狙うというような部分は確かにあったが、メジャーなものには背を向けるという意識はなかったと思う。当時はビートたけしでさえ、サブカル的な扱いをされていたが、今や彼は世界のメインカルチャーである。
今サブカルという言葉は、あえてメジャーなものを避け、マイナーな隙間に面白みを見いだす、そんな使われ方をしているような気がする。以前も書いたが、書籍の編集というのはもうそれだけでマイナーな対象を相手にする職業なので、よりマイナーなものを追いかけるというのは私の趣旨に反する。
そう考えると、私にはサブカル好きというのに全くあてはならないと思う。ただ、周囲の人々からすると私は「サブカルの人」のようで、飲み会などに誘われて行ってみるとサブカル好きの集いだったりして「サブカルっていいッスよね」などと声をかけられたりする。その度に、特にサブカルというものにこだわっているわけではない、ということを説明するはめになる。こんな事が頻繁に続くうちに、最初は 「サブカルを狙ってるわけじゃない」というスタンスだったのが、
「サブカルには全然、興味がない」
↓
「サブカルは悪」
↓
「サブカルって言うな!」
と変遷してしまったわけである。
しばらく年賀状だけのやりとりだった昔の会社の同僚と、久々に会おうということになった。部署が違う人だったのでじっくり話しをするのは初めてだった。
会社の現状や昔話、出版業界の状況など、とりあえずの話題も尽きたところで、こんなことを言われた。
「Oさんの作る本っていいですよね、僕、前からけっこう気になってました」
酔いが回ってきた頃合いであるから、どこまでの社交辞令かもわからないが、有り難い言葉である。
「自分の会社の本って、普通あんまり読まないじゃないですか。でも僕はOさんが編集した本はけっこう読んでるんですよ」
と具体的な書名や内容まで語り始めた。たしかに、本当に気にしてくれていたようだ。同業者に褒められるというのは非常に嬉しいことである。今日は心地よい酒が飲めそうだ。
彼は続ける。
「じつは、こうみえて僕も、サブカル大好きなんですよ」
「………………」
だ・か・ら、好きじゃないって!
※一昨日、久しぶりにテレビで「相棒」を見た。season8最終回SP。すさまじいくらいの出来映えだった。私がこれまで見た全てのドラマの中でも最高ランクの作品。見逃した方、DVDになったら是非!
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額ご協力ありがとうございました。
タテピーが岡田さんのおコトバに大ウケしてました。
清純、、、とか。
ツイッターを拝見し、素晴らしい展示そしてイベントだったのだな、と改めて。
清純、hikitacさんをイメージ、、、だったりして
本当に編集者なの?
そんなんじゃ困るよ、キースの本。
誠に失礼いたしました。
すぐに訂正させていただきます。
『LIFE』には万全を期して臨む所存ですので、
どうぞよろしくお願いいたします。